静岡県立大学国際関係学部・松浦直毅(まつうらなおき)のページ

〒422-8526 静岡市駿河区谷田52-1
静岡県立大学国際関係学部

研究業績

【執筆】森に入ったケータイ

以下の本に、ガボンのケータイの普及状況と、バボンゴ・ピグミーのケータイ利用に関する論考を書きました。
すこし前にやっていたアフリカのさまざまな地域社会におけるケータイの普及や利用に関する研究会の成果です。

「森に入ったケータイ―平等社会のゆくえ」『メディアのフィールドワーク―アフリカとケータイの未来
(羽渕一代、内藤直樹、岩佐光広編)北樹出版. pp. 102-117. 2012年9月.

ケータイは、情報格差を生みだし、ピグミーの周縁化を助長すると想定されがちですが、
実際には、萌芽的ではあるものの、バボンゴが生活に柔軟にとりこんでいる様子が観察されることを報告し、
むしろケータイは、相互扶助とシェアリングに根ざした平等主義社会になじみやすい特徴を
そなえたメディアである点を指摘しました。

ごく最近の詳細なフィールドワークにもとづいて生き生きと書かれた論考が多く、
ケータイを切り口に現在のアフリカの一側面を示した本として興味ぶかい内容だと思います。

【執筆】単著:現代の<森の民>

長らくつづけてきた、アフリカ熱帯林の狩猟採集民の研究をまとめた単著が刊行されました。

現代の<森の民> ―中部アフリカ、バボンゴ・ピグミーの民族誌』(昭和堂、2012年)

出版社のサイトの紹介は以下です。

「熱帯雨林に住むピグミーの人々。いまも狩猟採集生活を送るが携帯電話を持っていたり
街へ出稼ぎに行ったりと現代化している面も。それでもなお独自の文化を維持しているのが不思議でさえある。
そんな彼らの暮らしにどっぷり浸かったフィールドワークの記録。」

学術的な成果を世に問うものであり、人類学、アフリカ地域研究、その隣接分野を専門とする同僚や諸先輩方から
ご意見をいただきたいのはもちろんですが、それと同時に、本書にもあるとおり、

「決して器用とはいえないひとりのフィールドワーカーの苦悩にみちた経験をつづることで、
フィールドワークをこころざす後輩たちにとってすこしでも励みになることを期待する」
(はじめに、iv) 

ものでもあり、フィールドワーク(とくに熱帯アフリカ)に興味を持ってくれる人が出てくればうれしいです。

【学会発表】ムカラバ国立公園の獣害状況とその対策

12月5~9日にニュージーランドのオークランドで開催される国際保全生物学会でポスター発表してきます。
“Crop-Raiding Patterns of Wildlife and Damage Mitigation around Moukalaba-Doudou National Park in Gabon.”

ガボンのムカラバ・ドゥドゥ国立公園でおこなってきた獣害調査と獣害対策の取り組みについての報告です。
アブストラクトを以下に載せておきます。

ちなみに、11月11、12日熊本市動植物園で開かれたSAGA14(アフリカ・アジアの大型類人猿を支援する集い)でも同様の報告をしてきました。


Several conservation programs exist in central Africa, but management of the protected areas has been difficult, which can be partially attributed to the conflicts between conservation agencies and local communities. In particular, wildlife damage to crops is a major source of conflict because it threatens the survival of the local people. Therefore, it is essential to monitor and mitigate the actual damage to the fields by including the efforts of the local people.

The author examines crop raiding by wildlife around Moukalaba-Doudou National Park in southwestern Gabon. Forty-three local people (28 males and 15 females) were interviewed about the extent and characteristics of crop raiding by several species. The fields of several locals were also monitored for about two years to assess actual crop damage by wildlife. Interview data indicated that according to the locals, crop raiding, especially by elephants (Loxodonta africana cyclotis), is one of the most serious problems in the community, and they spend considerable time, physical effort, and money to protect their fields.

Quantitative data from monitoring shows that crop raiding by large mammals is not frequent, but the extent of damage is large in one such event. On the basis of the results and discussions with local people, the author suggests that community guarding is an effective and sustainable method for mitigating damage.

【執筆】社会変容の歴史過程

論文が刊行されました。

Matsuura, N 2011. Historical change in land use and interethnic relations of the Babongo in southern Gabon.African Study Monographs 32(4): 157-176.

アフリカ狩猟採集民の社会は、この数十年間に大きく変容していますが、文字記録がなく、
体系的な口頭伝承ももたないかれらの歴史過程を再構成するのは困難であるといわれます。

そこで本論文では、1. 歴史文書、2. ライフヒストリー、3. 通婚と名づけ、4. 地理的データの
それぞれを組み合わせることによって、バボンゴの土地利用と民族関係の変化の過程を分析しました。

【学会発表】日本アフリカ学会、日本文化人類学会

しばらく更新がとどこおっていましたが、最近の活動をご報告しておきます。

2011年5月21日
日本アフリカ学会第48回学術大会(弘前大学、青森)
「狩猟採集民のケータイ利用-ガボンにおけるデジタルメディアの普及とバボンゴ・ピグミーの社会変容」

「アフリカにおけるメディアの急速普及」と題したフォーラムのひとつの発表として、
バボンゴ・ピグミーとケータイとの関わりについて報告しました。
キャッチーなテーマということもあって比較的反応はよかったですが、
これからもう少し考察を洗練させていきたいと思います。

2011年6月9日
JSPS Asia and Africa Science Platform Program Seminar, Conservation and Sustainable
Use of Ghanaian Wildlife: Research Report and Plan for This Year.
“Crop raiding patterns of wildlife and damage mitigation
around Moukalaba-Doudou National Park in rn Gabon.”

昨年にひきつづき、野生動物研究センターとガーナ大の共同プロジェクトのセミナーで発表しました。
昨年同様に獣害状況についてまとめ、新たに有効な獣害対策の検討とその実施過程を報告しました。
この発表をたたき台に、12月にニュージーランドで開かれる国際保全生物学会で
ポスター発表を予定しています。近いうちにガーナも訪問できればと思います。

2011年6月11日
日本文化人類学会第45回研究大会(法政大学、東京)
「アフリカ先住民の歴史への多角的アプローチ-ガボン南部バボンゴ・ピグミーの定住化と民族関係の変容過程」

最近取り組んできた歴史過程の再構成というテーマについて発表しました。
この内容についての英語論文が、African Study Monographs誌に掲載される予定です。

【執筆】ガボンの伝統儀礼に関する論考

アフリカ諸国で多くみられるように、ガボンでは伝統儀礼が人々のあいだで信じられており、
近代的な医療と共存しています。
そのなかで、豊富な植物の知識と伝統儀礼の技能をもつピグミーは、
伝統儀礼の担い手として社会的に認められています。

このようなガボンにおける伝統儀礼の位置づけとバボンゴ・ピグミーの立場について、
簡単なエッセイを書きました。アフリック・アフリカのページにのっています()。

バボンゴは、伝統儀礼の担い手としての地位を生かして外部世界とのつながりを強めており、
そのことが、バボンゴに特徴的にみられる「近隣のバンツー系民族との対等に近い関係」の
要因のひとつであると考えています。

このことを詳しく論じた文章は、「ガボン南部バボンゴ・ピグミーの伝統儀礼を通じた外部世界との関係」
というタイトルで、『アフリカ研究』77号に掲載される予定です。

【セミナー発表】Collaboration for Conservation and Sustainable Utilization of Wildlife Resources in Ghana

JSPSアジア・アフリカ学術基盤形成事業で、京大野生動物研究センターとガーナ大との共同プロジェクトが
スタートするにあたって、ガーナ大の関係者数名を招いてセミナーがおこなわれました。

動物学・遺伝学がメインでしたが、わかりやすく面白いものが多かったです。
私もガボンの獣害状況について発表しました。

“Crop raiding by Wildlife around Moukalaba-Doudou National Park in Gabon”

先日のアフリカ学会での発表を英語にしたものです。
最近何回かこの話をしていろいろコメントをもらいましたが、論文としての方向性やつっこまれそうな問題点も
だいたい見えてきました。すこしずつ論文を書きすすめながら、獣害関係の論文をもっと渉猟したいと思います。

覚書としてそのうちここにアフリカにおける獣害研究のレビューを載せるかもしれません。

【学会発表】日本アフリカ学会(5月30日)

タイトル「ガボン南西部ムカラバ・ドゥドゥ国立公園周辺の獣害状況」

ガボン南西部のムカラバ・ドゥドゥ国立公園で2008年から動物による畑荒らしのデータを集めており、
1年分のデータをもとに、これまでの結果の概略を報告しました。

被害回数は少ないものの、人々は見はりに行くなど獣害を未然に防ぐ対策に苦労しており、
そのことが被害意識を高めていると考えられます。

獣害研究では、「インタビューだけでは被害が過大評価されてしまうので、定量的なデータで正確に把握すべき」
などといわれることがありますが、それは果たして「過大評価」なのか、そこにあらわれる被害感情も含め、
人々の暮らしにとって獣害がどのようなものかを理解しなければならない、というのがここでの主張です。

もうすぐ2年分のデータがそろうので、そろそろ論文にまとめることを考えていきます。

【執筆】ピグミーと農耕民の民族関係の再考

「ピグミーと農耕民の民族関係の再考―ガボン南部バボンゴ・ピグミーと農耕民マサンゴの「対等な」関係」
『森棲みの社会誌―アフリカ熱帯林の人・自然・社会Ⅱ』(木村大治・北西功一編)
京都大学学術出版会、pp.159-178.

熱帯アフリカにおける人類学の研究をまとめた『森棲みの生態誌』、『森棲みの社会誌』の2巻本のうち、
社会誌の方に上の文章を寄稿しました。博士論文までにおこなってきた研究のエッセンスをまとめました。

ピグミーと近隣農耕民の関係は、一般には上下関係をはらんだものとされてきましたが、
ガボンのバボンゴ・ピグミーは、農耕民マサンゴと比較的「対等な」関係を築いています。

このような関係のあり方を通婚、儀礼、訪問活動などから検討するとともに、
関係が変化し、現在のような関係が形成されてきた過程を考察しました。

まだまだこれから考えなくてはならないことは多いですが、ピグミーと農耕民がまざりあっていて
区別がつきにくいようすを見て、「誰がピグミー??」という疑問を抱いたところからはじまった
私のピグミー研究のこれまでのまとめとなっています。